−レッツ☆ウォー− 


しゃべる★戦争(2008.3.16)

 部活を終え、くたくたになりつつ家へ辿り着いた。そこで俺は奇妙な光景に遭遇した。日の落ちかけた薄暗い道、正確には家の前の花壇で、隣に住む双葉がスコップ、もしくはシャベルと呼ばれる物に話しかけていた。
「……って言う人がそれは違うってすごく怒鳴るのよ……」
 一般人ならば、この不可解・怪奇な少女に近付くのは躊躇うだろう。恐らく、いや絶対に避ける。だが、俺は彼女がいるすぐ脇の家に帰らなくてはならない。素通りは困難を極める。何せ、あれは俺の幼馴染みだ。
「……それでね、私はあんまり腹が立ったからこう言い返したの……」
 それにしても怖い。何で園芸用具と話しているんだ? すぐには声をかける勇気がなくて、しばらく立ち止まったまま俺は色々と躊躇った。
 制服姿のまま、延々と今日の出来事を話し聞かせる少女。当たり前のことだが、手の中のシャベルは反応を見せない。もう暗くなっているのに、いつまで続ける気だろう。五分ばかり経って、やっと俺は声を出すことに成功した。
「双葉、さん? た、ただいま」
「あら、いっちゃん。お帰りなさい。部活終わったのね?」
 俺に気付いた双葉は嬉しそうに手を、シャベルを振った。前振りなんて思いつかなくて、つい俺は単刀直入に疑問をぶつけてしまう。。
「あ、ああ。あのさ、なんでシャベルに話かけてんだ?」
 きょとんと目を丸くする双葉さん。続いて笑顔を見せてくれた彼女の言葉に、俺はもう謝りたくなった。
「あのね、清水君が『シャベルは喋るんだ』って教えてくれたの。だけどなかなかお話してくれないから、仲良くなれば喋ってくれるかと思って、私のことを色々教えてあげていたの。……でもいっちゃん、この子、口がないのにどうやって喋るのかしらね? お口、作ってあげた方がいいのかしら」
 すみません、御免なさい、申し訳ありません。双葉さん、それただのギャグなんです。俺の友達、馬鹿ばっかだからアホなギャグ言うんです。どうか無視してやって下さい。
 ……追伸、源氏へ。清水のことよろしく。お前の部下が馬鹿やったぞ。

☆ 本日の試合結果。しゃべる勝利。


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